組織マネジメントや人材育成において近年注目を集めている「カッツ・モデル」。「カッツ・モデル」とは、ハーバード大学教授のロバート・カッツ氏が提唱した『役職に応じて必要とされる能力』の割合を考えるフレームワークです。
マネジメント層に必要な能力を階層ごとに明示したモデルで、人材育成の計画や組織開発の方針づくり、研修内容の策定などに役立てられるといわれています。
今回は、カッツ・モデルに関する基礎知識や、マネジメント層に求められる3つの能力について、わかりやすく解説していきます。
カッツ・モデルとは
「カッツ・モデル」とは、ハーバード大学教授のロバート・L・カッツ氏が1950年代に提唱した、マネジメント層の役職とビジネススキルの関係性を明示したモデルです。「カッツ理論」と呼ばれることもあります。
カッツ・モデルでは、マネジメント層を「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の3つに分類。さらに、マネジメントにおいて必要な能力を「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つと定義しています。それぞれの階層にとって、どの能力がどのくらいの割合で必要なのか。分かりやすく図で示されているので、自分に今必要なのはどんなスキルなのかが理解しやすくなってます。
マネジメント層の3つの分類
トップマネジメント
最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)、会長、社長、副社長など、いわゆる経営者がこの階層に属します。トップマネジメント層は、経営方針や戦略の決定に関わる立場になるため、現場で具体的な指示を与えることはあまりありません。経営状況の実態を把握して意思決定を実行するだけでなく、結果に対する責任を負う立場でもあります。
ミドルマネジメント
部長や課長、そして工場長や室長、支店長、エリアマネージャーやスーパイザー、ブランドマネージャーといった管理職がここに属します。トップが決定した経営方針や戦略を理解し、下の階層に伝え、業務が円滑に進むように促す立場です。
ロワーマネジメント
ロワーマネジメントは、「下級管理者」「監督者」とも呼ばれる階層で、上層管理者の意思決定を実行する役割です。具体的には、係長、主任、チーフ、プロジェクトリーダーなどのような役職を指し、現場で監督を行うのがこの階層です。ミドルマネジメント層から指示された業務を確実に実行できるかが求められる立場です。
マネジメントに必要な3つの能力
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルは、「概念化能力」と訳されており、目の前の状況や情報を客観的に分析し、その本質をとらえて最適解を見出す能力のことをいいます。具体的には目の前の出来事を公平に分析し、正解を見つけ出す能力ともいえます。
コンセプチュアルスキルには以下の要素が含まれます。
【論理的思考(ロジカルシンキング)】
物事を体系的に整理し、筋道を立てて考える思考法のことを言います。
【批判的思考(クリティカルシンキング)】
物事の本質を見極めるために、経験や主観を度外視して物事を客観的にとらえる思考法のことをいいます。
【水平思考(ラテラルシンキング)】
水平思考とも呼ばれ、前提や既成概念、常識にとらわれずに可能性を広げて答えを導き出す思考法です。
他にも以下のような要素があるので押さえておきましょう。
柔軟性 / 受容性 / 探求心 / 応用力 / 洞察力 / 先見性 / 瞰力 / 知的好奇心など
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルとは、社内外のあらゆる関係者と円滑な意思疎通をはかり、良好な人間関係を築く能力で、次の要素が含まれます。
【リーダーシップ力】
組織やチームをまとめる力。目的に向かってメンバーを引っ張っていく力も求められます。
【コミュニケーション力】
対人的なやり取りにおいて、お互いの「意思疎通」や「情報共有」をスムーズにするための能力のことです。
【ヒアリング力】
他人の意見をきちんと聴く力。ただ話を聞くだけでなく、相手の表情やしぐさ、声のトーンなども観察し、本当に伝えたいことを読み取る力も求められます。
【プレゼンテーション力】
他人に自分のアイデアや考え、想いを理解させることのできる力。話し方といった感情面だけでなく、資料の作成など論理的に伝える力も求められます。
その他の要素には「交渉力」「コーチング力」などもあります。
テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、業務遂行能力のことです。担当している業務を問題なく遂行するために必要な知識や技術のことをさしています。業務別では、以下のようなスキル・知識が求められます。
- 小売り系:接遇スキル、データ管理スキル、トラブル対応スキル
- 事務・内勤系:パソコンスキル、経理スキル、電話応対スキル
- 営業系:プレゼンテーションスキル、商品知識、業界に関しての知識
- 技術系:業務に適した資格の保有、機械操作スキル
飲食業界なら、ソムリエや調理師などがテクニカルスキルにあたります。
まとめ
職位が高いほど、コンセプチュアルスキルは重要になってきます。だからこそ、ミドル層(中間管理職)の方は将来のためにコンセプチュアルスキルを磨くことを強くおすすめします。