管理職に必須「コンセプチュアルスキル」を理解する

コンセプチュアルスキルは、もともと「カッツモデル」というモデル図の要素でした。

1950年代にハーバード大学教授のロバート・L・カッツ氏により提唱されて以降、人材育成や組織開発の指針として活用され続けています。

※こちらははカッツモデルを図で表したものです。

この記事では、「コンセプチュアルスキル」にフォーカスを当てて解説したいと思います。

コンセプチュアルスキルは、「概念化能力」と訳されており、目の前の状況や情報を客観的に分析し、その本質をとらえて最適解を見出す能力のことをいいます。具体的には目の前の出来事を公平に分析し、正解を見つけ出す能力ともいえます。

目次

コンセプチュアルスキルの構成要素

ロジカルシンキング(論理的思考)

物事を体系的に整理し、筋道を立てて考える思考法のことを言います。ロジカルシンキング(論理的思考)を高めるために、基本をまずはしっかりと理解しましょう。

MECE(ミーシー)

「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」を略した表現であり、「モレなく、ダブりなく」という意味です。 物事を考えるときに、必要な要素を網羅しながらも、それらが重複しないようにする考え方を指します。ロジカルシンキング(論理的思考)で必要となる基本概念です。

ロジックツリー

ロジックツリーとは、問題をツリー状に掘り下げ、解決方法を論理的に探す目的として使われます。あるテーマや問題を設定し、それがなぜ発生したか、どう解決できるかなどといった視点で分解します。取り扱う事象を、樹木が枝分かれしていくように大きな項目から小さな項目へと分解しながら階層化して整理していきます。

クリティカルシンキング(批判的思考)

クリティカルシンキングは、「その前提は正しいのか?」ということを客観的に分析・検証して、本質的な結論や解決策を見出す思考法です。クリティカルシンキングは「最適解」に到達するために有効な思考法として、問題解決や意思決定の場面で積極的に活用されています。

クリティカルシンキングの基本姿勢

目的は何かを常に意識する

常に目的(ゴール)を意識することです。クリティカル・シンキングでは前提を疑い多面的に検討していくプロセスがあるため、ともすれば本来のゴールを見失いかねません。そこで、目的が何かをしっかり定めておくことが重要なのです。「何のために?」「どこが課題なのか?」といった視点を忘れないようにしましょう。

思考のクセに左右されずに考える

クリティカル・シンキングでは、人は誰しも思考の『クセ』を持っていることを前提として認識します。思い込みや偏見などに左右されないよう、常に「自分の主観が入っているかもしれない」「判断に好き嫌いや偏見などが反映されていないだろうか」と考えることが大切です。自分の思考にばかり埋没せずに、客観的に広い視野を持って行いましょう。

問い続ける

結論にいたっても考え続けることです。問題が解決したと思っても、そこで考えを止めずに問い続ける姿勢が必要です。その際には以下の3つの問いが役立ちます。

  • So what? (だから何?)
  • Why? (なぜ?)
  • True? (本当に?)

繰り返し考え続けることで、物事の本質がより明確になり、適切な解決策にたどり着くことができるはずです。日頃からこれらの言葉を意識し、考える習慣を身に付けましょう。

ラテラルシンキン(水平思考)

水平思考とも呼ばれ、前提や既成概念、常識にとらわれずに可能性を広げて答えを導き出す思考法です。

ラテラルシンキングの5つの発想法

不満に気づく

不満というのは、現状に問題がある場合につくり出される感情です。問題を解決していくことで、不満を解消できるようになります。実際に活用しようとする場合、「職場の人間関係に不満はないか」「仕事の手順に不満を感じていないか」といった、不満の感情を洗い出します。

物事を「なぜするのか?」の視点で見る

「日々、何気なく取り組んでいる業務」「突発的な業務」「上司から指示された業務」などに対して、「なぜこのようなフローなのか?」「どうして取り組む必要があるのか?」などと考えます。

〇〇ならばどうするか(言語化する)

「どうなったならば解決するのか」「何ならばよいのか」といったように、「ならば」を突き詰めて考えます。フラットな視点で問題を捉え直し、あるべき理想像を「言語化」していきます。
ラテラルシンキングは斬新な新しい発想を大事にする思考法なので、まず理想を「具現化」することが重要です。

どうやって解決策を見つけるか

「固定観念」「常識」「慣習」「前例」「ルール」といった、あらかじめ決められている、限られたものさしだけで考えるのはNGです。ラテラルシンキングでは、できる限り視野を広げ、直感的な感覚や斬新な発想などをフルに活用し、さまざまな観点から問題解決の具体案を検討していきます。

前提条件に縛られない

前例や慣習、前提条件は、無意識に私たちの思考や自由な発想を縛っています。あえて、「なぜこうなっているのか?」「どうしてこうなっているのか?」「何を前提に考えているのか?」と考える癖をつけ、自由な発想を生みだしましょう。

コンセプチュアルスキルを高めるメリット

課題を本質的に解決できる

コンセプチュアルスキルを高めると課題や問題に対して、本質を見抜き適切に対処できます。表面上の処置ではなく本質の部分を解決するので、同じような課題の再発を防止することができます。

柔軟な発想でクリエイトできる

コンセプチュアルスキルを高めれば、固定観念や既存の手法にとらわれない自由な考え方や、本質を見極めるためにあえて疑って考える思考法により、これまでにない新たな発想に行きつくことが期待できます。

企業理念が浸透する

コンセプチュアルスキルを高めることで、組織や組織を取り巻く環境を含めた全体像を把握できるようになります。これにより、企業理念や具体的な経営計画を各社員が正しく理解できるようになります。

リスク管理レベルの向上

コンセプチュアルスキルを高めることで、組織活動における様々なリスクを避けることが可能となります。また、探究心や俯瞰力によって市場の変化や法改正など、自社に影響を与える外部環境の情報をいち早く取り入れ、早期に対処することもできます。

コンセプチュアルスキルの高め方

コンセプチュアルスキルの高め方は2つあります。

1つは研修やセミナーに参加することです。もう1つは、普段から物事に対する考え方を意識することです。

普段から意識するポイントは、以下の3つです。

抽象化して考える

複数の対象に共通する要素を抜き出し、概念として捉えます。例えば「りんごが1個、桃が2個、オレンジが5個ある」この状況を抽象化すると「複数の果物がある」とひとくくりで捉えることができます。

抽象化のメリット
抽象化して考えるポイント
  • 全体や目的が把握できる
  • 共通する本質的な要素が理解できる
  • 情報を書き出す
  • 情報の共通点を探す
  • 共通点をグルーピングする

具体化して考える

抽象的なことを詳細な情報により特定することです。です。例えば「複数の果物がある」という状況を具体化すると「りんごが1個、桃が2個、オレンジが5個ある」となります。

具体化のメリット
具体化して考えるポイント
  • 情報やプロセスを理解できる
  • 構成要素が分かる
  • 詳細情報が多く特定しやすくなる
  • 5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように)で表す
  • 場面や手順をイメージする

本来の目的、趣旨がブレないように意識する

ミーティングなどで討議する際には、気付かない間に論点がズレてしまうことが起こりがちです。「事実」と「感情」、「自分の考え」を分けて、論理的に進められるよう意識することが大切です。

まとめ

コンセプチュアルスキルとは、あらゆる事象の本質を理解して判断するための能力です。わかりやすく表現すると「何事に対しても、大切な部分をすぐに見抜き、正しく判断できるスキル」です。

ロジカルシンキング(論理的思考)
物事を体系的に整理し、筋道を立てて考える思考法のこと。
クリティカルシンキング(批判的思考)
「その前提は正しいのか?」ということを客観的に分析・検証して、本質的な結論や解決策を見出す思考法。
ラテラルシンキン(水平思考)
前提や既成概念、常識にとらわれずに可能性を広げて答えを導き出す思考法。

これまでは、主にトップマネジメント層に必要とされるスキルでしたが、昨今においては、役職や立場に関係なく求められる傾向にあります。
コンセプチュアルスキルを高めて自分自身を成長させましょう。

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